「TikTokで商品が話題になったのに、購入に繋がらない」
「動画は再生されるけど、サイトへのアクセスが増えても離脱が多い」
EC事業を運営する多くの担当者が、こうした課題に直面しています。
従来のSNSマーケティングでは、投稿からプロフィール、外部リンク、そしてECサイトへと複数の画面遷移が必要でした。
この「移動の摩擦」が、購買意欲のあるユーザーさえも離脱させてしまう最大の原因です。
しかし、2025年6月30日に日本でサービスが開始された「TikTok Shop(ティックトックショップ)」は、この構造的な問題を根本から解決します。
動画を見て、気になった商品をその場で購入する。
アプリから一歩も出ることなく、決済まで完結する。
この「シームレスな購買体験」こそが、EC事業者にとって待望されていた販売革命なのです。
本記事では、TikTok Shopの仕組みと導入メリットから、Shopifyとの連携方法、そしてAIを活用した自動化戦略まで、EC売上を最大化するための全ノウハウを体系的に解説します。
TikTok Shop(ティックトックショップ)とは?仕組みと特徴
TikTok Shopは、TikTokアプリ内で商品の発見から購入までを完結できるEC機能です。
2021年にインドネシアで始まり、東南アジア、英国、米国と展開を広げ、ついに日本市場でも本格稼働しました。
アプリ内で購入が完結する「シームレスな購買体験」
従来のSNS集客では、以下のような複雑な導線が存在していました。
【従来の購買フロー】
- TikTok動画を視聴
- プロフィールページへ移動
- リンクをタップして外部ブラウザへ遷移
- ECサイトで商品を探す
- 会員登録 or ゲスト購入の選択
- 決済情報の入力
- 購入完了
この7段階のプロセスの中で、ユーザーは何度も「本当に買うべきか?」と自問します。
画面が切り替わるたびに、購買意欲は減退していくのです。
マーケティング用語では、これを「カゴ落ち(カート放棄)」と呼び、EC業界全体で約70%のユーザーが決済前に離脱すると言われています。
【TikTok Shopの購買フロー】
- TikTok動画を視聴
- 動画内の商品リンクをタップ
- 商品詳細を確認
- 購入ボタンをタップして決済完了
わずか4ステップ。
アプリから離脱することなく、「欲しい」と思った瞬間を逃しません。
決済情報もTikTokアカウントに紐付けられているため、再入力の手間もゼロ。
この圧倒的な摩擦レスの体験が、「衝動買い」を最大化する設計になっているのです。
日本市場における現状と今後の展望
日本国内のTikTok月間アクティブユーザーは3,300万人を超えており、10代では約70%、20代では約52%、30代でも約32%が利用しています。
もはや「若者向けアプリ」という枠を超え、購買力のある全世代にリーチできるプラットフォームへと進化しました。
注目すべきは、日本のEC化率がわずか9.38%(2024年経済産業省発表)という事実です。
eコマース市場規模は世界4位でありながら、EC化率はヨーロッパの約3分の1。
つまり、日本市場には「まだオンラインで買い物をしていない顧客層」が膨大に存在するということです。
TikTok Shopは、この未開拓市場を掘り起こす最強のツールになり得ます。
海外での成功事例も、その可能性を裏付けています。
【グローバル成功事例】
- 英国: ライブ配信での平均CVR(コンバージョン率)が14%超
- インドネシア: 食品ブランドがTikTok Shop経由で月商120%増を達成
- 米国: 2024年末ホリデーシーズンで総取引額20億ドル規模に到達
共通するのは、①動画ベースの商品訴求、②クリエイター/UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用、③アプリ内決済による離脱ゼロという3つの要素です。
日本市場でも、この成功パターンが再現されることは、ほぼ確実と言えるでしょう。
EC事業者がTikTok Shopを導入する3つのメリット
TikTok Shopの導入は、単なる「新しい販売チャネルの追加」ではありません。
EC事業の構造そのものを変革する戦略的投資です。
圧倒的な拡散力(レコメンドアルゴリズム)の活用
TikTokの最大の武器は、「フォロワー数ゼロでもバズる」という独自のアルゴリズムです。
InstagramやX(旧Twitter)では、投稿が表示されるのは基本的に「フォロワー」だけです。
拡散されるためには、まずフォロワーを増やし、エンゲージメントを高め、そこからシェアによって広がっていく必要があります。
これには時間がかかります。
一方、TikTokは「コンテンツの質」を最重視します。
ユーザーが動画を最後まで視聴したか、いいねやコメントをしたか、保存やシェアをしたか。
これらのエンゲージメント指標が高ければ、アカウントの規模に関係なく、おすすめフィード(For Youページ)に表示されます。
つまり、初投稿でも数十万回再生される可能性があるのです。
これは、広告費をかけずに膨大なリーチを獲得できることを意味します。
従来のWeb広告では、1クリックあたり数十円〜数百円のコストが発生しますが、TikTokでは「良い動画を作ること」自体が広告になるのです。
コンバージョン率(CVR)の向上
画面遷移の少なさは、CVRに直結します。
Baymard Instituteの調査によれば、オンラインショッピングにおけるカート放棄率は平均69.82%。
つまり、カートに商品を入れた10人のうち、実際に購入するのは3人だけです。
放棄の理由トップ3は以下の通りです。
- 予期せぬ追加料金(送料など): 48%
- アカウント作成を求められる: 24%
- 複雑な決済プロセス: 18%
TikTok Shopでは、これらの摩擦が大幅に軽減されます。
決済情報は既にアカウントに登録済み、送料も商品ページに明示、購入までのステップは最小限。
この「スムーズさ」が、衝動買いを促進する最大の要因です。
特に注目すべきは、「ライブコマース」機能です。
配信者がリアルタイムで商品を紹介し、視聴者がその場で購入する。
これは、テレビショッピングのデジタル版とも言えますが、視聴者とのインタラクションが可能な点が決定的に異なります。
質問に即座に答え、限定クーポンを配布し、購買意欲を最高潮に高めた状態で決済へ誘導する。
このダイナミックな販売体験は、従来のECでは不可能でした。
Shopifyなどの外部ECカートとの連携
「TikTok Shopを始めたら、既存のECサイトはどうなるのか?」
安心してください。TikTok Shopは、既存のEC基盤と「共存」できます。
むしろ、連携することで相乗効果が生まれます。
Shopifyをはじめとする主要ECプラットフォームとTikTok Shopを連携させることで、以下のメリットが得られます。
【連携のメリット】
- 在庫の一元管理: Shopifyで更新した在庫数が、TikTok Shopにも自動反映
- 受注の統合処理: TikTok Shopでの注文も、Shopify管理画面で一括管理
- 顧客データの蓄積: TikTok経由の購入者情報をShopifyのCRMに統合し、リピート施策に活用
- 商品データの同期: 商品名、価格、画像、説明文を二重登録する必要がない
つまり、「TikTok Shopは集客とファーストコンタクトの場所、Shopifyは顧客管理と長期的な関係構築の場所」という役割分担が可能になります。
衝動買い的な初回購入はTikTok Shop、リピート購入や定期購入はShopifyのECサイトへ。
このハイブリッド戦略が、LTV(顧客生涯価値)を最大化する鍵です。
ShopifyとTikTok Shopを連携させる方法と手順
ここからは、実際の設定手順を詳しく解説します。
TikTok ShopとShopifyの連携には、大きく分けて2つの方法があります。
【重要】日本ではShopify公式アプリが使えない
まず知っておくべき注意点があります。
Shopifyアプリストアには「TikTok」という公式アプリが存在しますが、2025年12月時点で、日本国内の事業者はこのアプリを使用してTikTok Shopに出店することができません。
Shopify公式ヘルプには、以下のように記載されています。
TikTokショップを使用するには、ストアが以下の要件を満たしている必要があります。
ストアは、米国、英国、スペイン、アイルランド、フランス、イタリア、ドイツ、またはメキシコのいずれかの国に所在している必要があります。
つまり、日本の事業者は現時点では対象外です。
しかし、諦める必要はありません。
サードパーティ製の連携アプリを使用することで、完全な連携が可能です。
TikTok for Shopifyアプリの導入(マーケティング用)
Shopify公式の「TikTok」アプリは、TikTok Shopへの出店はできませんが、TikTok広告の運用とピクセル設置には使用できます。
この違いを理解することが重要です。
【Shopify公式TikTokアプリでできること】
- TikTokピクセルの設置(ユーザー行動のトラッキング)
- TikTok広告アカウントの連携
- 商品カタログの同期(広告配信用)
- コンバージョン計測
【Shopify公式TikTokアプリでできないこと】
- TikTok Shop(日本)への商品出品
- TikTok Shop内での販売
- 在庫・受注の自動連携
つまり、Shopify公式アプリは「広告運用のための基盤」として機能し、実際の販売には別のソリューションが必要というわけです。
日本市場向けの連携方法:サードパーティアプリの活用
日本でShopifyとTikTok Shopを連携させるには、以下のようなサードパーティ製アプリを使用します。
【代表的な連携アプリ】
1. CoreLink for TikTok Shop(株式会社ハックルベリー提供)
日本企業が開発した、日本市場に特化した連携アプリです。
主な機能:
- Shopifyの商品データをTikTok Shopに自動同期
- 在庫数のリアルタイム連携(売れたら即座に在庫-1)
- TikTok Shopでの受注をShopifyに自動取り込み
- サイズチャート、ブランド名のマッピング機能
- 日本語サポート対応
導入手順:
- TikTok Shop Seller Centerでアカウント登録
https://seller-jp.tiktok.com/account/register にアクセスし、本人確認書類(運転免許証、パスポート等)をアップロードして審査を受けます(通常1〜3営業日)。 - Shopifyに「CoreLink for TikTok Shop」をインストール
Shopifyアプリストアで「CoreLink」を検索し、「アプリを追加」をクリックします。 - アクセストークンの取得と連携設定
CoreLinkアプリの設定画面で「Shopifyアクセストークン」を取得し、TikTok Seller Centerの「アプリとパートナー」セクションでCoreLinkと連携します。 - 同期設定のカスタマイズ
同期する商品カテゴリ、価格、在庫などのルールを設定し、自動更新を有効にします。
2. AfterShip Feed(グローバル対応)
世界17万以上のブランドが利用するEC支援プラットフォーム「AfterShip」が提供する連携ツールです。
TikTok Shopの公式認定ISVとして、プラットフォームの根幹を支える存在です。
メリット:
- グローバル基準の信頼性
- 大手ブランドの採用実績多数
- マルチチャネル戦略(Shopify + Amazon + TikTok)の一元管理が可能
商品カタログの同期と在庫管理
連携アプリを導入すると、以下のような自動化が実現します。
【自動同期される項目】
- 商品名 / 商品説明文
- 価格(税込/税抜の設定も反映)
- 商品画像(複数枚対応)
- 在庫数
- SKU(商品管理番号)
- バリエーション(サイズ、カラーなど)
【同期の流れ】
- Shopifyで商品を登録・編集
通常通り、Shopify管理画面で商品情報を入力します。 - 自動でTikTok Shopに反映
連携アプリが数分以内に変更を検知し、TikTok Shop側のデータを自動更新します。 - 在庫の双方向同期
TikTok Shopで1個売れるとShopifyの在庫が減り、Shopifyで在庫を追加するとTikTok Shopにも反映されます。
リアルタイム更新により「在庫切れなのに注文が入る」トラブルを防止します。
二重管理を防ぐための運用フロー
連携の最大のメリットは、「Shopifyをマスターデータベースとして使える」ことです。
【推奨運用フロー】
- 商品情報の更新: Shopify管理画面で編集 → 自動でTikTok Shopに反映
- 受注処理: TikTok Shopで注文 → Shopifyに自動登録 → 配送処理
- 在庫管理: Shopifyで在庫数を管理 → 全チャネルに自動反映
- 顧客管理: TikTok経由の顧客情報をShopifyのCRMに蓄積
この一元管理によって、「TikTok Shopの商品だけ在庫数が間違っていた」「どちらで更新すればいいか分からない」といった混乱を防げます。
ショート動画を「自動販売機」に変える運用と自動化
TikTok Shopの真の力を引き出すには、「投稿の継続」が不可欠です。
しかし、毎日動画を作り続けるのは、リソース的に厳しいのが現実です。
ここで重要になるのが、AIとツールを活用した「動画制作の自動化・効率化」です。
AIを活用した動画制作の効率化
動画制作を分解すると、以下の5つのプロセスに分かれます。
- 企画(何を伝えるか)
- 台本作成(どう伝えるか)
- 撮影(素材の収集)
- 編集(カット、テロップ、音楽)
- 投稿(キャプション、ハッシュタグ)
この各工程に、AIツールを組み込むことで、制作時間を従来の5分の1以下に短縮できます。
1. 企画・台本作成:Claude / ChatGPT
以下のプロンプトを使えば、売れる台本が一瞬で完成します。
あなたはTikTokマーケティングの専門家です。以下の商品情報を元に、TikTok動画の台本を3パターン作成してください。
【商品情報】
– 商品名:保湿クリーム「モイストリッチ」
– 特徴:敏感肌向け、無添加、24時間保湿
– ターゲット:20〜30代女性、乾燥肌に悩む人【動画の要件】
– 尺:15〜30秒
– 構成:冒頭3秒でフックを作る
– トーン:親しみやすく、共感を呼ぶ
– CTA(行動喚起):商品リンクへの誘導【出力形式】
シーン番号、秒数、映像内容、テロップ、ナレーション(セリフ)
2. 動画編集:CapCut(AI機能搭載)
CapCutは、TikTokを運営するByteDance社が提供する動画編集アプリです。
AI機能が充実しており、編集の大部分を自動化できます。
- 自動字幕生成: 音声を認識して自動でテロップを生成
- 背景削除: 人物だけを切り抜き、背景を差し替え
- AIアバター: 顔出ししなくても、AIキャラクターが代わりに話す
- 音楽の自動マッチング: 動画の雰囲気に合ったBGMをAIが提案
この流れなら、編集経験ゼロの人でも、10分程度でプロ並みの動画を作成できます。
属人性を排除した「顔出しなし」の販売戦略
「動画投稿」と聞くと、多くの人が「顔出ししないといけないのか…」と躊躇します。
しかし、TikTok Shopで成功している企業の多くは、顔出しをしていません。
パターン1:商品クローズアップ型
商品そのものを主役にする撮影方法です。
手元だけを映し、商品の質感や使い方を丁寧に見せます。
パターン2:ビフォーアフター型
商品を使用する前と後の変化を対比させます。
視覚的なインパクトが強く、説得力があります。
パターン3:AIアバター・ボイスオーバー型
最新のAI技術を使えば、バーチャルキャラクターに商品説明をしてもらうことも可能です。
Elai.ioやSynthesiaなどのツールを使えば、テキストを入力するだけでAIアバターが話す動画を自動生成できます。
このアプローチの最大のメリットは、「再現性」です。
人間が出演する場合、その人が退職したり、スケジュールが合わなかったりすると投稿が止まります。
しかし、AIアバターなら24時間365日、無限に動画を生成できます。
投稿スケジュールの自動化
投稿のタイミングも、売上に直結します。
TikTokのアルゴリズムは、投稿直後の反応(初速)を重視するため、ターゲットユーザーがアクティブな時間帯(通勤時間や夜のリラックスタイム)を狙うのが鉄則です。
TikTokの公式予約投稿機能や、LaterなどのSNS管理ツールを使えば、事前に作成した動画を指定した時間に自動投稿できます。
これにより、担当者が休日の場合でも、最適なタイミングでコンテンツを届けることが可能になります。
まとめ:SNSは「見る場所」から「買う場所」へ
TikTok Shopの登場は、Eコマースの歴史における大きな転換点です。
これまで、SNSは「認知を獲得する場所(見る場所)」であり、ECサイトは「購入する場所(買う場所)」でした。
しかし今、その境界線は消滅しつつあります。
SNSは「見て、その場で買う場所」へと進化しました。
この変化は、ユーザーにとっては「便利」なことですが、事業者にとっては「対応できなければ淘汰される」という厳しい現実でもあります。
まだ日本での本格普及には少しの時間的猶予があります。
今のうちにShopify環境を整え、AIによる動画制作フローを構築し、波が来た瞬間に乗れる準備(サーフボードの手入れ)をしておくことが重要です。
テクノロジーを活用し、感情に訴求する。
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